2010年3月1日月曜日

h22.2.25 本年度348名の卒業生が旅立ちました


      式 辞
 この飾磨の地に、春の気配が日ごとに感じられ、私たちの心に、希望という思いが生まれ始めている 今日の良き日に、御来賓の皆様と、保護者の皆様の祝福をいただき、兵庫県立飾磨工業高等学校平成21年度卒業証書授与式が、挙行できますことに、心から感謝申し上げます。
 ただいま卒業証書を授与しました全日制課程190名、多部制課程158名、合計348名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。そして、お子様を育て、支えてこられた保護者の皆様には、心よりお喜びを申し上げます。
 我が子が成長して自分の力で独り立ちしていく姿は、何よりも嬉しく、しかし 少し寂しいものです。本当の喜びとは、このような「うれし、さびし」の感情を言うのだろうと思います。
「銀(しろかね)も 金(くがね)も 玉(たま)も 何せむに まされる宝 子に しかめやも」
山上憶良の歌です。
「銀も金も、宝石さえ見劣りがする。子ども以上の宝なんて、ありはしない」という意味の歌です。
卒業生の皆さん、高校生活はどうでしたか。就職する人にとっては、飾磨工業高校が最後の学校になります。母校というものは、年を取れば取るほど懐かしいものになります。本校で、全力でやりきったと言える人、悔いが残る人、いろいろいると思います。これからの人生がどうなるのか、誰にもわかりませんが、皆さんができることは、どんな結果になろうとも、今できることを、精一杯、誠実にやりきることが大切です。卒業した後の方が、学ぶことは多いでしょう。社会人として、お客様や先輩や 同僚との人間関係の中で、社会的な責任の中で、自分の力で人の信頼を勝ち取り、自分で生計を立てていくことの重みを、ひしひしと感じていくことでしょう。これまで、親からあるいは社会からどれだけ 守られていたのか、身にしみて感じていくことだろうと思います。これまでに本校で学んだことを基礎にして、辛抱するところは辛抱をして、着実に実績を積み上げていってほしいと思います。
 さて、アメリカの不況に始まった世界的な不況から、景気はいま、少しずつ上向きになっています。企業も国民もその中で、創意、工夫を重ねて、この難局を乗り切ろうとしています。日本の企業は300万社以上あるといわれます。中小企業白書によると、その99%は従業員が300人以下の中小企業で、日本の雇用の88%を占めているといいます。日本の中小企業には、技術力やシェアで世界最高レベルにある小さな世界一の企業がかなり多くあります。それらの企業に共通していることが3つあります。一つ目は「こだわり」、二つ目は「小回り」、三つ目は「徹底したお客様重視」です。
私たちの日本を 元気にするには、ものづくり現場を 元気にすることが必要だと思いますが、大切なことは、まず第一に、精度と美しさにこだわること、第二に、製品開発、営業、サービスにおいて小回りをきかすこと、第三に、お客様の要求、苦情などに対して、「かゆいところに手が届くサービス」を徹底して展開していくことです。日本人の長所である器用さ、こだわり、誠実さ、親切さを、強化することが、日本を元気にすることになると思います。そして、ここのところに、日本の工業高校の存在意義があります。本校もこのことに貢献していきたいと考えています。兵庫県立飾磨工業高等学校の卒業生である皆さんが、日本の産業の世界的な発展のために、活躍し、社会に貢献してくれることを、私たちは、切に願っています。
皆さんが卒業した後も、私たち教員は、「飾工で学んだことが役に立ちました。」と、卒業生に言わせるような教育活動を展開していきたいと考えています。近い将来、社会で実績をあげた皆さんが、母校に来て、活躍ぶりを自慢してくれることを期待しています。
 最後になりましたが、御来賓の皆様には、御多用にも関わりませず、御臨席賜りましたことに、心よりお礼を申し上げます。 本年度の卒業生の皆さんの今後の活躍と、御家族の皆様の御多幸をお祈りして、式辞といたします。


平成22年2月25日  兵庫県立飾磨工業高等学校長   田中 哲也